今年も3.11がやってきた。もう6年経った。それまでにも北海道や中越など大きな災害は起こっていて取材もしていた。どれも悲惨な現状に胸を痛め何かできることはないかと思っていた。
3.11でようやく小さいながらも自分も行動に移すことができるようになった。たくさんの友人が何かできないかと動き始めたのだ。被災地に粉ミルクが行き届かないときいた知人が「おっぱい活動」を始めた。他の友人は福島のものを積極的に購入する活動を始めたし、取り残された動物を救助する活動を始めた友や、避難所に髪を切ったりマニキュアをしにいったりしている知人もいた。
ボクも報道の端くれとして、ボクに伝えられることを探し取材したり、駄目だと言われていた海産物を食べに行ったり、地域の人に寄り添うにはどうしたらよいか、考えたりしていた。
それが半年も経たないうちにクモ膜下に倒れてしまった。復興もまだまだの時にボクの記憶はぷつっと切れてしまったのだ。それからも広島の土砂災害や熊本の地震などとんでもないことが日本で起きた。
3.11からまもないころ被災地に立ったボク。福島にも何度か訪れた。
海から流れ着いた大型船や津波で流された家屋やバス停、幼稚園バスに何かわからないまっ黒なもの。そして流されてしまった命。いろいろなものが目の前に迫ってきて沿岸部のその地獄絵に震えた。「なんとか自分でできることはないか」そう真剣に考えさせる場面だった。それなのにほとんどなにもできずだった。
それが気がつけば、テレビの画面からは片付けられた広大な土地。まだまだ終わったわけではない、昔とはすっかり変わってしまった風景ではあるけれど、みなさんが築き上げた新しい町が映っていた。病で倒れていた5年余りの間に知らない間に進んでいたあそこからの復興は並大抵のことではなかっただろう。本当の意味で元に戻ることは決してないのだけれど、やはり生きていかねばならない。
病気になったボクも昔どおりにならないけれど生きていくためには奮い立たせて自分を取り戻さなければならない。そんなちっぽけなボクと重ね合わせその数千倍のご苦労をおもうと胸が熱くなる。
先日、「恋愛奇譚集」という映画を見た。福島を舞台にしていると言う。今のボクにできることと言えば福島の米を食べたり、このような福島が関わっている映画を見たりそんなことぐらいしか応援できない。でも本当にささやかながら今でも続けている。
「恋愛奇譚集」は福島県の天栄村という山あいの村で撮られた。村や県が福島にはこんなにのどかな普通の生活のところもあるという宣伝もかねて若いクリエーターに資金を提供してできた映画だ。映画自体は恋愛物語で「復興」という文字は映画の宣伝文句にすら出てこない。もちろん提供してくれた資金だけではできるわけも無くいろいろなスポンサーが付いてくれて実現したらしい。
台湾出身の主役のヤオ・アイニンさんが言った。震災の頃、台湾でも大変心配していました。けれど、今ここに来て見て目に飛び込む風景も食べ物も人間もみんな素敵でした」と話してくれた。聡明なヤオ・アイニンさんは、画面の中でも透き通るような美しさと芯の通った存在感が光っていた。なにより天栄村の青く輝く田園や山々、タイムスリップしたようなバス停や、そんなのどかな日本の風景が印象的だった。
この村ももちろん除染作業も行なわれていたわけで、ここにくるまでのご苦労、これからもまだまだ福島が抱える問題を考えると「よかった」とは簡単にはいえないけれど、この映画をみて今の福島をちょっとでも考える何かになってくれたらいいなと思います。
◆上映スケジュール(決定&内定)
フォーラム仙台:2017年3月31日まで
宇都宮ヒカリ座:2017年4月22日~(2週間)
第七藝術劇場:期間未定
海外での上映や映画祭出品の展開も予定されています。
詳しくは公式HP:http://renaikitan.com