もう20年も前に週刊誌で取材した方からお手紙をいただいた。
週刊アスキーで、「デジタル業界の女たち」というのを連載していた。その回はDELLというパソコンの会社の有能な秘書の方の取材だった。その時でもう170回を超える連載回数だったからずいぶんいろいろな方達を取材してきたんだと思う。
デジタル業界で開発や、宣伝部の方々を取材することが多い中「秘書」という職種の取材だったので逆によく覚えていた。
彼女に会ったのは、その1回だった。退職され今は違うことをやられていると手紙には綴ってあった。
何かのきっかけで、古い記憶が「今」に呼び戻され、全く別々に生きていたそれからの時がまた思い出とともに交わる。
彼女のそれからの人生は、もちろん全く知らない。彼女だってボクのことは知らなかった。昔の記憶とともに「そういえばどうしてるかな?」なんて今の時代でまた出会うのだ。
最近、もう何十年ぶりという方からお便りをいただいたり、会いませんか?とお誘いを受けたりそんなことが続いている。
一回しか話したことがない人でもこうして鮮明に覚えていて「おお、そんなこともあったなあ」なんて思い出す。昔が今になる。
最近、「偶然」って偶然じゃなかったりするんだよなあってよく思う。偶然っていうのは100%でないってことだけど、今まで経験したことの積み重ねは未来の何かのためなんだあって思う。
「今まで経験したことに何一つ無駄なことはない」歳をとればとるほどそう思う。
彼女を20年前の取材した時、秘書という職種のデジタル業界のなかでかなり『人と人』のアナログな、人間が得意とする微妙な調整や修正なんかを見てとった。もちろんツールはDELLのパソコンで管理されているバリバリのデジタルではあったのだけど。
こんなにデジタルな世の中になったって人間ってすごいなあと彼女を見て思った。
それからDELLのパソコンを見るたびの彼女を「僕のボスです」とおっしゃっていた社長と彼女を思い出していた。彼女の取材のおかげでDELLというパソコンを見るたびに人間のすごさを思い出したりした。
今はどういう会社の成長したかあまり存じ上げないが、20年前から僕のDELLの印象はその上にできている。