冬の山形に常々行きたいと思っていた。蔵王や銀山温泉。厳しい冬の時期に見せるご褒美と言うべき景色をみたいと思っていた。山頂付近で見れる樹氷。車椅子でも見れるんだろうか?

健常な頃なら子供を連れてスキーにでも行って温泉に入ってそんな柔らかな旅の設計図だったであろう。今回の旅に向けて様々な体験記や現地ツアー、旅行パックなどをまず研究する。バリアフリーな旅も健常者の旅も。
ボクはいかに健常な人と同じように旅ができるか?そんなことを発信していきたいと思ってうる。もちろん安心をパックされたバリアフリーな旅と謳っている旅も当たり前だが素晴らしく設計されている。アシストもつく。その分旅行代金も高くなる。高い。いきたくてもいけない…と思うほど高価なこともある。

普通に出かけてここまでは大丈夫。ここからはダメっていうのがわかれば車椅子に乗っていても、他の障害があったとしても目安のなると思うのだ。
普通が良い普通が良いって騒いでいたってボクは一人で旅ができるわけでもなく、どうしても助けが必要となる。妻の同行はもちろんのこと撮影だってホテルだって、できれば段差のないバリアフリールームの方が使いやすい。山形までの新幹線だって車椅子用の席を予約して駅のスタッフに改札から座席まで誘導してもらったり、、とにかく助けてもらってばかりだ。車いすに乗るようになってとても戸惑ったこの頼るということ。悪いなあ、と引け目に感じたり行動自体を遠慮したり。

けれど海外に行くとそれは日本特有な事だとも感じる。アメリカでの話になるが「車いすなんだけど席ある?」そんなワードを発するのは「???」な事らしい。「もちろん!なんで?」普通の人と同じ。「車いすだから入り口の近くの席ね」なんていう概念がない。奥まった席も希望すれば砂浜の席にだって担いで行ってくれる。周りの人だって車いすが通るとわかればすっと席を立って道ができる。奥まった席だろうとなんの問題もない。しかし、車いす用のパーキングなどは日本なんかよりずっと使用が厳しく管理されている。専用のカードをダッシュボドに出して停めなければかなり高額の罰金となる。旅行者であってもその州の警察が発行するカードがなければ障害者であっても罰金だ。旅行者でも発行してもらえるので事前に申請していくのがおすすめ。障害者であるか否かはそのカードが決めると割り切る。それ以外の人は停めてはいけない。



ちょっと話はそれたけど、山形の旅でも本当にいろいろな方の世話になった。山形バリアフリー協会の森谷さんにはバリアフリーの良いホテルの情報を教えていただいたり、雪道に必要なJINRIKIをお借りしたり。それに加藤代表にも引き合わせていただいた。この加藤代表の話はまた今度じっくりすることにしよう。
それにいつものことながら同行してくれた登嶋先生がいなくてはVRの撮影だってできなかったし車椅子での移動は無理だった。




今回一番ありがとうを言いたいのは蔵王のゴンドラのスタッフの方々。事前に電話して車椅子だと伝えると来てチケット買った時車椅子だって行ってください混んでたらちょっと待たせるかもですが、スタッフでお連れしますんで」と慣れた応対。でも行ってみて驚いた。まず、山麓駅の入り口から20段ぐらいの急な階段。切符売り場を行けると上層階まで1階分ずっと階段。ゴンドラに乗るところも階段。ゴンドラに乗って上まで行くと山頂までゴンドラを乗り換える。またまた階段。入れ替わり立ち替わりその持ち場のスタッフ4人がかり5人がかりで車椅子ごと持ち上げて上がってくれる。上にいけば無線で連絡が入っていてまたそこのスタッフが持ち上げてくれる。滑る雪の上を。「はいどーぞ、気をつけていってらっしゃい」。



山頂についたボクと妻は建物のなかまで凍り付いている駅構内に場違いのとこに来てしまったか?と驚き暴雪で視界も1メートルもない中そっと外の出てみた。行き道は数メートルなら進めそうだ。念願の樹氷は吹雪のため近寄らないとそれが樹氷だとはわからない始末。視界がないのだ。横殴りの目も開けていられない吹雪の中ここに車椅子で立っている自分にまたまた感動をし、何をやってるんだかと涙と笑いもこみ上げてきた。これたんだなあと。
しかしそれもこれも皆さんのおかげ。守られているからできることだ。
こんな無理だろうと言う地に立っていられる自分がちっぽけにも思えて、でも達成感も半端ない。旅の醍醐味だ。
こんなささやかな冒険、とお思いかもしれないがボクにとってはチョモランマへの第一歩ぐらい大きい冒険だった。


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