地方裁判所での裁判を傍聴した。
オレオレ詐欺の裁判だった。

まだ2020年の統計がないので2019年のものになるが警視庁のまとめによると被害額は301億5000万円だと言う。1日あたりに8260万円ものお金が騙し取られている計算になる。

今回傍聴した被告は20歳前半の受け子役だった。執行猶予3年の別件の余罪があり今回の罪が確定すればその前歴の罪にも服役することになる。傍聴席はコロナの関係もあり間隔をあけて座ることにはなるがほぼ満席だった。被告の友人が多数傍聴に来ていた。それにご両親。お母さんは、入廷前の廊下で弁護士に何度も何度も頭を下げていた。

「ああ、よかった先生が来てくれなかったらどうしようかと…」来ないわけはないのだがお母さんのすがる気持ちが垣間見え切なくなる。
「せっかくやっていただいて…ごめんなさい…」言葉にならない言葉。
お母さんは、来てくれた友人にも「ありがとうね」と頭を下げる。地元の友人なんだろうか、皆似た感じのダボっとした洋服を着ていて開廷を待つ廊下では口数も少ない。

パタパタと動き回るお母さんが裁判所のそれに似つかわしくなくてつい目がいってしまうが母の気持ちが表れているようで追ってしまう。やはり罪を犯してしまった息子の傍聴に来てくれる友人には「ありがとう」なのだろう。

被告が腰に綱に繋がられた手錠を後ろ手にされ入廷してくる。両脇に刑務官が付き添っている。罪を犯したと言うことはそう言うことだ。もう私たちのいる柵の手前とは違うところにいる。
この若い被告が拘置所に収監され裁判所で裁かれる。ヤンチャだっただけの頃とはもう違う。罪を犯したのだ。公判ではオレオレ詐欺の余罪も3件読み上げられる。
淡々と読み上げられ、本人も間違えないと認め、弁護人もそれに相違ないと伝える。次回の後半日時が調整されあっという間に本日の裁判は終了した。次回には罪が確定される予定だ。

彼には、前科があり執行猶予中だった。きっとあのお母さんは息子の執行猶予の判決に涙し、弁護士さんに深々と頭を下げたに違いない。罪を深く反省し自宅でその執行猶予の期間を過ごし、何事もなく3年が過ぎていくことを願ったに違いない。それが事もなく崩れた。「ありがとう」と「ごめんなさい」を繰り返す母の必死な姿が息子に届くことはなかった。

彼のような末端が逮捕されたところで、組織の大元を潰さないとダメなんだろうと思うが彼は人生において大きな代償払うことになる。大きな組織から彼は抜け出す事ができるのか闇の大きさを感じて怖くなる。



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