「しょっちゅう会っていたのに急に会わなくなってしまう人ってたまにいるよね」「なんでだろうね、引っ越したとか喧嘩したとか仕事が変わったとか?」
そんな話をしている矢先だった。

知人のカメラマンがコーヒーショップを出したらしいと聞いた。
そのカメラマンは、もう10年以上も週刊誌の事件の取材を一緒にしていた。毎週毎週事件の現場に行って話を聞いて取材をし、彼は写真を撮った。ボクがくも膜下出血で倒れる数日前も彼と取材に行っていた。倒れてからの記憶はほとんどなく気がついたら今の生活になっていたボクは、それまでの日常をすっかりどっかに置いてきてしまった。まったく違う空間に周りの人ごとすりかわった。

たまに頭を過ぎる「広島のみんなは元気かな」広島もRCCラジオやテレビにお世話になっていたのでほぼ毎週末帰っていた。放送局のみんなとはもちろん、悪友とも会う機会が多かった。広島在住の友人達ともパタっと会うこともなくなった。たまに東京を尋ねてくる友人が顔を出してくれるがそうしょっちゅうな話ではない。

そのカメラマンとも入院中はお見舞いに来てくれていたというがすっかり会わなくなっていた。
彼とあてもなく歩いて事件のたねを探した地方都市の凸凹なアスファルトの道や震災後の荒れた海岸、彼の車の助手席に座って寝てしまっているボク。今でもたまに思い出す。
よく思い出す光景って結構意外なとこだったりするんだよね、なんであのアスファルトの道を彼と歩いている光景を思い出すんだろうって思うよ。と、久々に連絡してみようかなあ?と考えていた。

彼はちょっと前からおいしいコーヒー豆を仕入れて焙煎する仕事を始めていた。「コーヒー頼んでどうしているか聞いてみて」妻に言うと「パパ見て?!」それとほぼ同時にFacebookに彼がコーヒーショップを開店するというニュースが書き込まれたと言う。「これは行くっきゃないでしょ」以心伝心。あちらはまったくそんなこと思っていなかっただろうが、連想ゲームのように「ものすごくよく会っていた人たちと会わなくなる」話からポツポツ思い出を辿っていたらFacebookに行き着いた。



昔の時空と今の時空が二つの水玉が吸いよせられるようにくっついて一つになった感じだなあと思った。まだオープン前のそのコーヒーショップにお邪魔すると、ボクは車椅子。彼だって昔とは違う。けれど、それこそ毎週欠かさず会っていた仕事仲間だ。何年も会っていなくたって彼は彼だ。話は弾む。会わなくなった理由もある。彼とはボクの病気で仕事ができなくなったから。昔と同じ空間には帰れないけどそれは今でもつながっていて、結構内容の濃い物語が書けるもんだなあと思った。二人の人生だけでもそうなんだから関わった人との別れ道や交わったところだけ描いてもおもしろそうだな、年表とともに書いてみたいと思った連休でした。

 

*RCC編集担当からお知らせ・・・神足さんの新しい本が文藝春秋から8月27日に発売されます。
神足裕司 西原理恵子『コータリン&サイバラの 介護の絵本』
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163912486
次回のコラムで詳しくご紹介する予定です。お楽しみに。

 


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