岩永 哲

あす(3月24日)から、大雨や暴風をはじめ警報や注意報が広島市に出る場合の発表方法が変わります

簡単に言えば、これまでの発表は「広島市」全体が対象だったものが、あすからは広島市に8つある「区ごと」に発表される形へと変更されます。

政令市では、仙台市のように東部や西部に分かれて発表される例はありますが、区ごとに発表するのは全国で初めてとなります(特別区である東京は除く)。


どういうことか、もう少し具体的に見てみましょう。

例えば、発達した雨雲が上のような形でかかっているとします。今後も同じような場所で降り続き、この雨雲がかかっている広島市佐伯区で警報の発表基準に達するとします。

その場合、これまでは「広島市に大雨警報」という形で発表されていましたが、これからは「広島市佐伯区に大雨警報」と発表される形へと変わります。


区ごとに発表するのには理由があります。広島地方気象台がまとめたデータをみてみましょう。

2017年7月からの3年半の間に、広島市に出た大雨警報は全部で34回ありました。これが区ごとに発表されると、発表回数にかなりの地域差が出てきます。最も多い佐伯区では30回の大雨警報が発表される一方で、南区や安芸区では9回しか発表されません。広島市でも市西部や市北部の内陸にある区で、発表回数が多くなる傾向にあります。


区によって発表回数に大きな違いがあるのは、ザックリと言えば、「山沿いの方が激しい雨がより降りやすい」からです。

先ほどの大雨警報が発表されたのと同じ期間中に、1時間30ミリ以上の激しい雨が解析された回数を見てみます。すると佐伯区や安佐北区では100回前後に達する一方で、広島市中心部では20回程度しかありません。


これは広島市中心部の平地に比べて郊外の山沿いの方が、激しい雨を降らせる積乱雲が発達しやすいことが関係しています。

積乱雲が発達するには、暖かく湿った空気が上昇しやすい環境にある必要がありますが、山があることでより簡単に上昇しやすくなるからです。広島市中区などで激しい雨が降る場合、中心部の平地で積乱雲が発達するようなケースは少なく、周辺の山地で発達した雨雲が風に流されてくる場合です。


今回、警報や注意報を区ごとに発表することで、自治体の防災対応の効率化も期待されています。

広島市は、合併で市全体の面積は広く、同じ市内でも気象条件の差がとても大きいのが特徴です。このため、大雨への警戒や避難情報を出すかどうかの防災対応はそれぞれの区ごとに判断して行っています。一方で、「警報」や「土砂災害警戒情報」は、広島市全体に発表されていて、情報に対する信頼度の低下が懸念されていました。

自治体が避難指示を出すかどうかを判断する目安でもある「土砂災害警戒情報」については、すでに去年6月から区ごとの発表に変更されています。今回の警報や注意報の変更は、それに続く形といえます。

これで、特に夏の夕立の場合など、広島市の一部しか激しい雨が降っていないのに、市全体に警報が出たために明らかに必要のない災害対応をする、といったことをせずに済むかもしれません。


大雨以外の警報・注意報はどうなるのでしょうか。

今回、警報や注意報を区ごとの発表に切り替えるのは大雨への対応が最大の理由です。とはいえ、それ以外の警報や注意報を市全体に発表する形にすれば、受け手は混乱します。なので3月24日からは広島市に出る、すべての警報や注意報は、区ごとに発表する形となります。

今後は、波浪や高波、高潮の警報・注意報は、海に面した区のみに発表されます。また、強風、乾燥といった注意報は、区によって発表の階数に違いはほとんど出ないのではないでしょうか。

広島市の警報・注意報の区ごと発表への切り替えは、3月24日午後1時頃です。

広島市の気象警報等の発表区域の変更について(広島地方気象台)





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