岩永 哲


厳しい冬の寒さも終わり、最近はすっかり春の暖かさを感じられる日も多くなりました。そんな冬が終わりを迎えるこの時期に、毎年、気象庁が発表するのが「暖候期予報」、つまり「夏(6月~8月)」の天候予報です。


ことしの夏の天候予報は2月25日に発表されましたが、その予報がちょっと気になる内容に…。なぜなら、「2018年の夏」と似た特徴が多くみられるからです。ではこの夏の予報を見る前に、2018年がどんな夏でだったかを簡単に振り返ってみましょう。


2018年、梅雨の末期に起こったのが「西日本豪雨」です。豪雨の直後に梅雨があけると、8月にかけて、連日、猛烈な暑さが続きました。広島市中区では35℃以上の猛暑日の日数が合計28日に達し、過去140年あまりの観測の中で最多に。月間の平均気温は、7月、8月ともに上位にランクインしています。


また、2018年は、全国的にみても観測史上最も気温の高い記録を続々と更新、記録的な猛暑となりました。国内最高となる41.1℃を記録したのもこの年でした。全国で熱中症により病院に運ばれた人の数も際立っています。では、この夏の天候予報と2018年に発表された夏の天候予報を比べてみましょう。


まずは、ことしの夏の天候予報です。広島を含む中国地方は、
気温=「平年より高い」
降水量=「ほぼ平年並み」
と予想されています。

注目は気温で、
「平年より高い確率=50%」となっています。


気象庁が予想する1か月先や3か月先、それよりもっと先の天候予報は「長期予報」と呼ばれますが、この長期予報は、期間全体を「3つの階級」に分けて大まかに傾向を予測します。

気温の場合、以下の3つの区分
「平年より高い」
「平年並み」、
「平年より低い」

が、それぞれどれくらい現れる可能性があるかを確率で示します。

「平年より高い=50%」は、高温に振れる可能性がけっこう高いことを意味しています。


この夏の予想の背景を説明したのが上の図です。

➀日本の夏の暑さのカギを握る「太平洋高気圧」が例年以上に北へと張り出す
➁こちらも日本の暑さを左右する上空の「チベット高気圧」がいつもより北東方向つまり日本付近にまで強く張り出す
③日本付近に吹く上空の西風(=偏西風)が通常より北に位置する

などの影響のため、「日本付近は例年以上に暖かい空気に覆われやすく『猛暑』のおそれがある」とみられています。


一方、2018年の予想はどうだったのでしょうか。上の図は、2018年2月に気象庁が発表した夏の天候予報の解説図です。2つを比べてみると、太平洋高気圧やチベット高気圧の張り出し、偏西風の位置などの大まかな特徴が似ていることがわかります。


その他にも共通点があります。それが直前の冬の天候です。ことしも2018年も、直前の冬は気温が平年より低い「寒い冬」でした。どちらの年も冬に「ラニーニャ」現象が発生していたことも共通しています。

ちなみに2018年の夏の予報では、中国地方の気温は「平年より高い確率=50%」でした。


そしてもう一つ、予測の精度が上がっています。気象庁はことし2月、長期予報の計算モデルを改良しましたが、特に夏と冬の予報精度が大きく改善されたとしています。

今回の夏の天候予報だけで、この夏が2018年と同じような記録的な猛暑になる、と決まるわけではありませんが、例年より暑い夏になる可能性が高いかもしれない、ということは少し頭の片隅に入れておいてもよさそうです。


「暖候期予報(夏の天候予報)」(気象庁)

暖・寒候期予報資料などの変更について(気象庁)



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