広島で繰り返される大雨災害で最も大きな人的被害をもたらしている土石流.その特徴を再現して防災につなげる研究に活用するための実験装置が完成しました.それが国内最大級の土石流実験装置です.
西日本豪雨の際に土石流が道路上を流れ下って被害が拡大したことから、実験装置によって土石流が道路に達した際の影響を調べることを目的に、広島大学と中国地方整備局が連携する形で設置しました.渓流をイメージした水路と谷の出口に広がる扇状地を実際の40分の1程度の大きさで再現.水路の勾配は0度から最大で20度まで傾けることが可能です(今回の実験では18度に設定).勾配を変えることのできる土石流の実験装置としては科国内最大級だといいます.
また、谷の出口に広がる扇状地をイメージした部分は、勾配が上部から下流に向かって12度、6度、0度と次第に緩やかになっています.これは土石流がふもとに流れてきたらどのようにふるまうかを調べるためのものです.実際の土石流は勾配が3度より緩やかになると土砂交じりの流れは止まるとされています.
今回の実験装置の最大の特徴が非常に細長い水路です.幅10センチなのに対して長さは15メートルもあります.これにより実際の土石流で見られるある特徴を再現することができるといいます.
住宅地に流れ着いた人の背丈を大きく超える巨大な岩….こちらの写真はいずれも広島の土石流被災地の様子です.(上:広島土砂災害 2014年・安佐南区)(下:西日本豪雨 2018年・安芸区).土石流によってコアストーンなどとも呼ばれるこうした巨石が運ばれ住宅を直撃することで被害を拡大させる一因ともなっていますが、特に広島など花こう岩地域で起こる土石流では、度々みられる光景です.
山の上部で発生した土石流は谷筋を数百メートル~数キロ流れ下ってふもとへ達します.その際、大きな巨石が次第に土石流の先頭部分に集まってくるという特徴が知られています.石や岩の粒径の違いによって水の浮きやすさの違いや流れの表層と川底付近で流速が異なることから起こるとされています.
今回の実験で捉えられた映像では、流れ始めは大小の砂や石が均等に混ざっていたものが、次第に大きいサイズの石が先頭に集まってくる様子が捉えられていました.水路から氾濫台に流れ着いたあとを見ると、流れが運んできた土砂の先頭に大きなサイズの石が運ばれているのが確認できます.
2018年の西日本豪雨では
土石流が道路まで達したあとに
土砂や流木交じりの大量の水が
道路上を流れ下ることで
被害が拡大するケースもみられました.
今後、広島大学では水路の出口の氾濫場に
住宅や道路の模型を置いて
土石流が住宅地がどのように広がっていくのか
再現することを計画しています.
将来的には3Dプリンターで地形の起伏を再現するなどして
検証を進めたいと話していました.
最近はシミュレーションによる研究も進んでいますが、
こうした実験だと、また違う形で
土石流被害をイメージすることもできそうです.
子どもたちの教育にも使えそうな気がします.
ここ最近、数年に一度の頻度で
土石流による土砂災害が起きている広島ですが、
今年もお盆の時期に降った異例の大雨で
人的被害こそは出なかったものの
土石流が発生して建物が倒壊する被害も出ました.
全国で最多の土砂災害警戒区を抱えていますが、
広島大学減災・防災センターの海堀正博センター長は
住宅や道路の配置について
都市計画の段階から考えることで
被害を減らすことにつながればと話していました.
以下に関連の動画もありますので
興味を持られた方はご覧いただければと思います