岩永 哲


ことしの大雨シーズンは
避難勧告の廃止や
線状降水帯発生情報のスタートなど
「大雨に関する情報」に
色々と動きがあります。
そしてきょう、
もう一つ大きな変化がありました。
「特別警報の発表基準変更」です。

これによって
2014年の広島土砂災害のような
局地的な集中豪雨でも
特別警報が発表される
といいます。


今回、発表基準が変更されたのは
土砂災害を対象とした
大雨特別警報です。

これまでは5キロメッシュ
(5キロごとに分けた)
それぞれの地点において
「降った雨の量」
「土の中の水分量」

という2つの指標を使用。
「50年に一度レベル」となった地点が
10以上または50以上となれば
「大雨特別警報」を発表されました。
ある程度広い範囲に
記録的な大雨が降ること

条件となっていた形です。



広島県に特別警報が発表された
3年前の西日本豪雨の際の
気象レーダーと
土砂災害の危険度分布です。

この時は、県内の広いエリアで
48時間雨量が記録的な値を観測。
また、土砂災害の危険度分布も
「極めて危険」な状況を示す
濃い紫色のエリアが
広い範囲に現れています。


一方、2014年の広島土砂災害では、
77人が犠牲となるなど
甚大な被害となったものの
大雨特別警報が発表されることは
ありませんでした。

被災地付近に設置された雨量計では
3時間に200ミリ以上という
その場所にとっては
数百年に一度レベルの
記録的な雨量を観測しましたが、
線状降水帯による猛烈な雨は
安佐南区や安佐北区のごく一部の
狭いエリアに限られていたため、
特別警報の発表に必要な
「ある程度の広い範囲」という基準に
達しなかったためです。

こうした甚大な被害につながるも
局地的な集中豪雨だったために
特別警報が発表されないという課題は
広島土砂災害の前年に
伊豆大島で起きたケースでも
表面化していました。



きょうからの新たな基準では、
これまでより細かい
1キロごとのメッシュで
「土の中の水分量」のみで
判断する形になります。
過去の大きな災害なども参考に
特別警報の発表基準が設定され、
1キロメッシュの地点数が10以上なら
特別警報が発表
されます。


これにより従来の基準に比べて
より狭いエリアの集中豪雨でも
特別警報が発表されやすくなるほか
「被害の大きさ」と
より関係の強い値が基準となるため、
特別警報と実際の被害の大きさの
関連性がよくなるといいます。

今回の新たな基準であれば
7年前の広島土砂災害でも
「大雨特別警報」が発表されます。



ではどのタイミングで特別警報を
発表することができるのでしょうか。

こちらは2014年当時に
実際に発表された
大雨に関する気象情報です。

また、被災地付近で
土石流の発生が頻発したのは
午前3時20分すぎあたりからでした。



気象庁の検証によれば
新たな発表基準をあてはめると、
午前3時の時点で
大雨特別警報の発表基準に
達していたことが分かりました。
発表するまでに
多少のタイムラグはありますが、
それでも午前3時台には
特別警報を発表できるといいます。

ちなみに同じ7年前の豪雨で
今月17日から始まる
「線状降水帯の発生情報」が
発表できるのは午前4時。
特別警報より遅いタイミングです。



このタイミングを見て思うのは
大雨特別警報の発表より前に
安全な場所に移動して
身の安全を確保すること重要さです。

先月、大雨警戒レベルが変更され
避難情報の内容が変わりましたが、
あらためて強調されているのが
「レベル5を待つことなく
 レベル4のうちに避難を終える」
ということです。

甚大な被害につながる集中豪雨で
特別警報がきちんと出るように
発表基準が改善されたことは
非常に大事なことですが、
それとは別に自らの意識で
いかに早い避難行動に
つなげていくかも
あわせて考えたいです。



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