大雨で災害のおそれが高まった際に
市町が出す避難情報について
今週、大きな動きがありました。
内閣府が
市町村が住民へ避難を呼びかける
3つの情報のうち、
避難勧告を廃止して
避難指示と一本化する方針を
固めたというものです。
「避難勧告」は
避難にかかる時間などを考慮して
発表される一方で、
「避難指示」は
災害の危険がさらに高まり
極めて危険な状況になっているため
ただちに身の安全を確保してもらうため
出されています。
内閣府が行ったアンケート調査では
「避難勧告」と「避難指示」の
両方の情報の意味を
正しく理解している人は
17.7%にとどまっていると
されています。
おととしの西日本豪雨や
6年前の広島土砂災害など
近年、広島県では
大規模な豪雨災害が起きていますが、
被災地となった地域以外では、
避難情報への関心や理解度が
そこまで高くない面は
あるかもしれません。

国も分かりにくさを改善しようと
去年から災害の危険度を
5段階のレベルで示し、
住民の取るべき行動を伝える
大雨警戒レベルを導入しました。
気象庁が出す気象情報や
国が出す河川の情報なども
警戒レベル相当情報として
住民の取るべき行動と
紐づけています。
ただ「避難勧告」と「避難指示」は、
5段階の大雨警戒レベルで
どちらもレベル4に位置付けられ、
「わかりにくい」との指摘が
一部の自治体などから出ていました。

大雨警戒レベルの導入などでは、
災害の専門家やメディア関係者、
気象庁や国交省などがメンバーの
内閣府が設置した作業部会で
内容が議論された結果を踏まえて
決まっています。
避難勧告と避難指示を
今後どうするかについても
すでに作業部会で議論は
行われていたようです。
ただその結論を飛び越えて
今回の方針が固まった話が
出てきた背景には、
ことしの夏も九州で
甚大な被害が出たり
全国各地で記録的な大雨が
相次いだりする中で
内閣府で判断して決めた側面は
あるのかもしれません。
内閣府は、近く作業部会に
2つの情報を一本化する案を提案して
了承を得たい考えだということで、
その方向へ進んでいく可能性が
高いとみられます。

今回の方針について、
広島県や県内の市町の反応です。
県や広島市、熊野町は、
分かりにくさが解消される、
逃げ遅れを防ぐことにつながると
好意的にとらえています。
一方、坂町や三原市は、
わかりやすくなる反面、
情報が頻繁に変わることの
懸念も感じているようでした。


一方、避難行動に関する
調査・研究をしている
京都大学防災研究所の
矢守克也教授は
今回の方針について
「アリバイ作りのような改正」と
厳しい意見です。
これまで10数年、
繰り出されてきた対策のほとんどが
情報の新設、表現の改定
情報の精度向上といった
情報本体の改善ばかりだと指摘。
それよりも
情報と行動の橋渡しが
うまくいっていないことが問題で、
そこにもっと手をつけるべきだと
主張しています。
情報以外にもある
避難スイッチを入れるための素材を
どう伝えて、
実際の行動を促していくか
そこをもっと考えるべきだと
指摘しています。

現状、身の安全を
確保すべきかどうかの判断が、
避難勧告や避難指示といった
市町村が出す避難場があまりに
重要視されすぎだと感じています。
避難情報は
判断材料の一つに過ぎません。
ハザードマップや
リアルタイムの情報など、
災害リスクのある場所や状況が
これだけ示されている中では、
避難勧告や避難指示を
一本化するかどうかよりも、
危険な場所にいる人が、
もっとその自覚を持つ必要も
あるのではないでしょうか。