岩永 哲


ことしも全国的に豪雨による
甚大な災害が起きてしまいました.
気象庁が「令和2年7月豪雨」
と名付けた今回の豪雨は、
雨量の記録としても
平成最大の豪雨災害だった
2年前の西日本豪雨を上回ったと
発表されました.

「令和2年7月豪雨」の観測記録について(気象庁HP)



広島県内でも6月後半からは
度々大雨となりました.
この1か月間のトータルの雨量は
広島市など南西部の一部では
平年の2倍以上の雨量が降っています.
九州などのように短時間の
非常に激しい雨がなかったために
大規模な土石流や河川の氾濫が
相次ぐような甚大な被害には
つながりませんでしたが、
状況は紙一重だったといえます.



とはいえ県内で犠牲者が
出てしまっています.
14日、東広島市で起きたがけ崩れでは
家の裏の斜面が崩れた住宅を直撃、
1階部分が潰される形で倒壊して
巻き込まれた住人2人が
犠牲となりました.

災害発生直後は、現場に駆け付けた
近所の住民や救助隊の呼びかけに
応じていたというだけに
本当に残念でなりません.

夜通し救助活動を行うも…2人死亡確認(RCCニュース)



災害発生の翌日の報道では、
東広島市が出した
避難勧告のタイミングが云々…
といった内容が中心で
伝えられていました.
ザックリ言えば、
2年前の西日本豪雨を受けて
東広島市は
避難勧告を出す基準を
通常より一段階下げて、
土砂災害危険度が
大雨警報の発表基準
(図の黄色)になれば
避難勧告を出すとしていました.
今回の現場周辺では、
午前3時20分に基準に達しましたが
それを見落としたために
避難勧告の発表が
災害発生後になってしまった…
というものです.

倒壊の民家は「土砂災害特別警戒区域」がけ崩れ発生後に避難勧告(RCCニュース)



ただ個人的には、今回の災害では
一番大事な問題は
そこではないと考えています.
現場の映像を見る限り、
もし二階で過ごしていれば
命を落とさずに
済んでいたかもしれない

感じたからです.



静岡大学防災総合センターの
牛山素行教授が調べた
1999年から2018年の20年間に
全国で起きた
豪雨や台風などの風水害で
犠牲となった人が「屋内」「屋外」の
どちらで被災したかをまとまた
調査結果です.

風水害の犠牲者全体では
屋外と屋内はほぼ半々の割合ですが、
土砂災害だけに限ると
8割の人が屋内で被災
しています.
また土砂災害で犠牲となった9割近くが
土砂災害の危険性が
指摘されている場所で被災し
命を落としています.




今回のがけ崩れを見て
すぐに思い出したのが
6年前の8.20豪雨災害で
初めの方に通報があった
広島市安佐南区山本のケースです.
住宅裏の斜面が崩れて
土砂が建物内に流入、
家はまったく倒壊しなかったものの
土砂が流れ込んだ一階の部屋で
寝ていた子ども2人が亡くなりました.



がけ崩れが小規模であれば
二階にいれば助かるケースも
少なくありません.

よく言われる「垂直避難」がわりと
効果を発揮することがあります.

一方で、土石流の場合は、
大きな石や樹木を伴って
時速40キロ前後の速さ襲います.
押し寄せるパワーが強いため
建物は根こそぎ押し流されます.
建物内にいること自体が危険です.

「がけ崩れなら垂直避難も有効」(RCCニュース)




今回の東広島市の倒壊現場は、
去年12月に、急傾斜地の
土砂災害特別警戒区域に
指定されたばかりでした、
2年前の西日本豪雨では
現場のすぐ近くで
土砂災害も発生していたようです.

災害前日の天気予報では
夜中に激しい雨のピークが来ることが
繰り返し伝えられ、
ちょっとした土砂災害なら
いつでも起こりうる危険性も
指摘されていました.

母親の方に事情があって普段から
あまり屋外への避難には
消極的だったようですが、
二階で過ごしてさえいれば…と
本当に残念に思います.



西日本豪雨や8.20豪雨災害のような
大規模な土石流が頻発するのは稀で、
むしろ今回のような小規模な
土砂災害が起こる場合の方が
多いと思います.

その場合、
ちょっとした住民側の意識で
命を落とさずに済むことも
少なくありません.
広島県は土砂災害の警戒区域が
全国で最も多く、
県内で4万7000か所あまりが
指定されています.
 ※県内の土砂災害警戒区域数
   全体数  47,329か所

     土石流  16,880か所
    急傾斜地  30,435か所
    地すべり    113か所

自分の住む場所の危険度を知った上で
特に危険なエリアであれば、
災害リスクのある場所で
暮らしているという意識

もっとしっかり持つ必要が
あるのかもしれません.


災害情報リンク先
 気象庁HP → 雨雲の動き 土砂災害危険度 浸水害危険度 洪水危険度
 
広島県防災Web(避難情報・土砂災害危険度分布・ハザードマップなど)

土砂災害ポータルひろしま(土砂災害警戒区域など)

川の防災情報(全国の河川の水位情報や様々な気象情報のまとめサイト)

重ねるハザードマップ(土砂災害・洪水・高潮・津波など)





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