岩永 哲


ことしの大雨シーズンから運用が始まった
5段階の大雨警戒レベル。
けさの大雨に伴い、全国で初めて
広島県に「レベル4」が出されました。



この大雨警戒レベルができたのは
去年の西日本豪雨がきっかけです。
大雨の前から自治体や気象庁など
大雨への警戒を呼びかける様々な情報が出たものの
情報の危険度合いがわかりにくく
必ずしも避難行動に結びつかなかった…
という反省からです。




情報を5段階のレベルに紐づけることで
情報が何を示しているのか
直感的にわかりやすくするという狙いです。
新たな判断基準ができたというわけではありません。
これまであった情報をレベルに分けた分類し、
そのレベルに応じて
どのような行動をとればいいかを示したものです。

5段階のレベル化の中で
実際に避難行動をとる段階が
レベル3とレベル4にあたります。

レベル3は避難に時間を要する人や
早めの避難を始めたり、
その他の人は避難の準備を始める段階。

レベル4はすみやかに
避難を始める段階といった形です。
 ※避難勧告や避難指示が
  同じレベル4に含まれる背景は
  以前のブログを参照に
  ⇒知っておきたい「避難情報のレベル化」(2019/4/26)

そして、もっとも危険度が高いレベル5は
「災害の発生情報」との位置づけです。
このレベル5が発表された段階では
重大な災害がすでに起きてしまっている
極めて危険な状況とされ、
レベル4のうちに避難行動を
済ませておく必要があるとされています。



きょうはRCCをはじめニュースなどで
初めてレベルを絡めた形で伝えられましたが、
伝え方や反応をみていると
まだ色々と課題はありそうです。

たとえば「全員避難」という表現ですが、
個人的には誤解を招く可能性があると感じています。
避難勧告が出た対象地域の中で
土砂災害危険箇所などの
特に災害の危険度の高い場所にいる人全員に
避難を呼びかける意味あいですが、
全員避難という言葉だけが強調されると
地域全体の全員と捉えられかねません。

また会社で話をしていると
「避難=避難所へ行く」という考えが
まだまだ根強く残っていると感じました。
避難は「自らの安全を確保すること」で
必ずしも避難所へ行くことではありません。
避難所に行くことがかえって危険な場合もあります。

今回、いきなり広島県に出たのもあって
「レベル化で避難勧告の判断基準が下がって
 レベル4が出やすいのでは?」
という声も聞きました。
しかしレベル化で避難勧告の判断基準が
変わったわけではありません。
きょうの雨では、レベル化の有無に関わらず
同様の避難勧告は発令されていたはずです。

他にも、
「『レベル4』と『レベル4相当』という言葉が
 混在していてよくわかない」
といった意見もありました。

言葉だけで情報を伝えるラジオの場合、
説明の図などの視覚的な情報がない中で
どうやって簡潔にわかりやすく伝えるかは
まだ手探りの状態でRCC内でも議論が続いています。





まだ始まったばかりなので
色々と課題があるレベル化ですが、
個人的には、将来的に浸透していけば
直感的にわかる有効な手段になるのではと感じます。

自治体の出す避難勧告や避難指示は
気象庁の災害の危険度分布に関するデータが
判断材料の大きな柱となっています。
この危険度分布は
大雨による災害(土砂災害・浸水・洪水)について
メッシュ状または河川ごとに発表されていて
気象庁のHPでリアルタイムに
だれでも見ることができる情報です。




では土砂災害の危険度分布を例に
きょうの大雨を振り返ってみます。

午前5時の時点では
危険度は黄色(レベル2相当)でしたが
午前5時半になると
赤色(レベル3相当)が広がっています。
広島市、廿日市市、大竹市には
午前5時46分、大雨警報が発表されます。



午前6時になると
薄い紫色(レベル4相当)が広がりました。
広島市は一部の地域に対して
午前6時15分に避難勧告(レベル4)を発令。
午前6時半には、
広島市、廿日市市、大竹市に
土砂災害警戒情報(レベル4相当)が発表に。



午前7時台になると
広島市のその他の地域や
坂町や熊野町などにも
避難勧告(レベル4)が発令されました。
今回はその後に発達した雨雲が東に抜けたため
午前7時半になると危険度が一気に下がりました。

自治体が出す避難勧告などの情報は
こうした気象データを元に判断するため
危険度分布の変化に比べると
どうしても遅くなる傾向にあります。
ただ自ら情報を取りに行けば
同じレベルという指標で
危険度分布の情報が示されるので、
自分のいる地域のリアルタイムの危険度を知り
早めの判断に生かすこともできます。




情報のわかりやすさを目指したレベル化ですが、
ただしそれは、自分のいる場所が
どんな災害リスクがあるのかを
きちんと把握してることが大前提です。
土砂災害の危険がある場所なのか、
川の増水や氾濫の危険が高いのか、
それとも浸水のリスクがあるのか…。

命を守るためどうするかの判断は
結局のところは個人の判断にかかっています。
自分のいる地域の災害特性を把握した上で
今回のレベル化を安全確保のために
具体的な行動を起こすきっかけとして
大雨シーズンを乗り切ってもらえればと思います。


大雨・洪水警報の危険度分布:気象庁HP
避難情報や危険度情報など:広島県防災ウェブ
各種ハザードマップ:国土交通省ポータルサイト





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