POST:岩永 哲


甚大な災害となってしまった九州北部豪雨。
先日、土砂災害に詳しい広島大学大学院の
海堀正博教授(砂防学)とともに
ヘリで被災地を上空から見る機会がありました。
そこから見える被災地の特徴から、
海堀教授は、山あいの中小河川が引き起こす
洪水被害のおそろしさとともに、
中国地方でも同様の災害が起こる危険性が
十分あることを指摘しています。







こちらは人的被害が最も大きかった
福岡県朝倉市杷木地区の上空。
そこで目に飛び込んできたのは
周辺の山々のいたる所で現れた斜面の崩壊。
「表層崩壊」と呼ばれるもので、
猛烈な雨によって山の表面部分の
深さ数メートル程度が崩れる現象です。


海堀教授によると朝倉周辺で崩れた山々は、
上空から見ただけで確定的ではないとした上で、
風化した花こう岩(まさ土)のような
風化土壌層が崩れているのがわかるといいます。






この山が爪でひっかかれたように
崩れている光景をみて思い出したのが
7年前の2010年に庄原市で起きた
局地的な豪雨災害。
この時も、直後に海堀教授と一緒に
ヘリで被災地上空を飛びましたが、
山のいたる所で表層崩壊が起きた様子は
よく似ています。




この時、被災地に近い
庄原市西城町大戸の雨量計で観測された雨量は
1時間90ミリ以上、3時間173ミリ。
おそらく表層崩壊が頻発した山々では
この記録以上の猛烈な雨が
降っていたのではないかと推測されています。

そしてこの庄原で崩れた山はの土壌は
流紋岩や安山岩といったもので、
よく広島の土砂災害が起こると
呪文のように繰り返される「まさ土」と呼ばれる
水を含むともろくなる
風化した花こう岩ではありませんでした。
ある強さ以上の猛烈な雨が降れば
そこまで土壌の性質によらずに
表層崩壊が頻発する危険性を示した災害でした。





ただ、海堀教授は今回の被災地周辺では
表層崩壊にとどまらず、
隣り合う崩壊が一体となったり、
一度ではなく何度も起きたりするなど
より大きな規模の崩壊がみられると指摘。

これは3年前の広島や7年前の庄原の豪雨が
猛烈な雨がつづいたのが
2~3時間程度だったのに対し、
今回の福岡では9時間あまりの非常に長い間
つづいたことが背景にあるのではとしています。




そして今回、被災地では記録的な量の
土砂や流木が流れ込んだことも
被害を拡大させた要因の一つともされています。





今回、多くの犠牲者は筑後川に流れ込む
いくつかの支流に沿ったエリアでした。
被災地からそこを流れる
支流の源流部(川の起点)の山地にかけて
猛烈な雨が長時間降ったことで
無数の表層崩壊が発生、
土石流となって支流に流れ込み、
さらに土砂や倒木を伴った濁流となって
支流を流れ下り被災地を襲ったとみられています。




こうした大量の流木は
川をより氾濫させやすくさせます。
こちらは2009年7月、
山口県防府市で大きな被害を出した
土砂災害の時に撮影した様子。
近くの川があふれ始めて国道上を流れ出した水は、
数十分後には濁流へと変わりました。



この川の氾濫のきっかけが
川をまたぐ国道の橋げたの下に
上流から流れ着いた流木が
完全に詰まったため。
行き場を失った水が道路上へと
あふれていきました。
こうした流木による河道の閉塞は
特に中小河川の洪水の際に
よくみられる現象です。



詳細な調査を待たないとなんとも言えませんが、
今回の九州北部豪雨で流れ出した
土砂や流木の量は川の水量とともに
かなり記録的なモノとなった可能性が高いです。

山あいを流れる川で起こる
洪水被害の危険性をまざまざと
見せつけた今回の豪雨災害ですが、
それは中国地方で起こり得る
災害リスクを示しているともいえます。





九州北部豪雨の被災地を上空からみた海堀教授は、
過去に広島県内で起きた大雨災害では
1972年7月の県北豪雨が
今回の災害と状況が似ていると指摘しています。



停滞する梅雨前線による大雨で
江の川や支流の馬洗川や西城川などが各地で氾濫、
三次市中心部が広く水没したほか、
山あいを流れる川沿いでは
多数の家屋や道路が流されるなど
大きな被害が出ました。
この時に降った雨量は1週間で
三次市で622ミリ、
中国山地で広く500ミリ以上でした。

一方で、今回の九州北部豪雨の被災地では
9時間程度で500ミリを超える雨量を観測。

今回の雨の降り方をみていると、
私たちが生きているスパンで経験している
過去最大級の想定を超えるような
雨の降り方をする可能性は十分あると感じます。

海堀教授は、広島をはじめ中国地方は、
今回、九州北部の被災地で起こったことと
同じようなリスクがあることを
あらためて再認識してほしいと強調していました。