入院中である。
三代達也(みよ・たつや)さんの著書『一度死んだ僕の、車いす世界一周』を読んだ。

この半年くらい三代さんのことはSNSなどで一方的に存じ上げていた。三代さんのSNSには南米ボリビアのウユニ塩湖をさっそうと車いすで走る写真が添付されていた。海外に出ることに躊躇していたボクに、いつも世話になっている登嶋さんが「神足さん、こんな人もいらっしゃいますよ。大変だろうけど行けますよ。神足さん行きたいっておっしゃっていましたよね。行きましょうよ」とそれをみせてくれた。果てしなく続く湖と空との境目もわからない空間で車いすを走らせている三代さん。気持ちが良いだろうなあ・・・と目を瞑る。それよりもなによりも車いすでそこに立っている三代さんの姿はボクを大きく前進させた。三代さんは喋れるし車いすも自分で操作できる。ボクは車いすを動かせばいつのまにか片寄って溝に落ちるし、意思も伝えるのも難しい・・・。そんな行けない理由を色々並べて諦めているフリをしていた。けれど、登嶋さんと三代さんという倍ほども年の違う2人から、ビビッとなんか力ももらった。「行けるかもしれない」そう思うようになり今年はハワイに行ってくることができた。

その三代さんが本を出したというではないか。

さっそく読んでみた。まず「はじめに」の部分から涙が止まらない。自分と重ね合わせて実感する部分と彼の新しい世界に飛び出していく力に感動を覚える。
最初は「どうせできっこない」「そんなの無理だ」と思っていた・・・病院から自宅への単独での帰宅や東京一人暮らし、通いでの就職、海外旅行、世界一周・・・どんどんハードルは上がっていく。
ベッドで寝たきりだと宣告されてお母さんが24時間ベッドの横の椅子で看病している時の自暴自棄の三代さんがどんどん変身していく姿が、ボクの救いでもある。
本を読み進めていくと三代さんの身体の不自由さも徐々にわかってくる。努力と根性と愛嬌と賢さと礼儀正しさ、無謀さ、謙虚さ。そんな色々な要因の積み重ねで、世界一周は乗り越えられたんだと思う。病気もすれば詐欺まがいなことにも遭遇する。ボクの行きたいウユニ塩湖はやはり並大抵ではない行程だったようだ。三代さんの物差しでここは車いすでは危険な感じの街とわかるのはもちろんのこと、やっぱり三代さんが体験した話が面白い。
「運がいい」とよく言うがその「運」はやっぱり自分が引き寄せるもので、自分の努力だとも思う。三代さんの本を読んでいてそんなものを感じた。そして、こんなおっさんですが、三代さんを見習いたいと思う。どこにでも行けそうな気がしてくる。なんでも諦めていた自分を再認識。もう一踏ん張りしようと思う。

三代達也(みよ・たつや)/著『一度死んだ僕の、車いす世界一周』 光文社 2019年7月発売 本体1,500円+税
 



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